ペンペン草を抜きに行く
前回の続きです。古い平屋の瓦屋根のてっぺんから生えてきた「ペンペン草」を、母親に頼まれて抜きに行くことになった私。
こんなとき、アクション映画のワンシーンを思い出します。
主人公と悪役が取っ組み合って、ビルの上から落ちる。カーポートの屋根に派手に転落して、ズボッと人型に通り抜けて、さらに下へ転落のパターン。
でも、私の実家のカーポートの屋根はグニャグニャの素材。しかも、その下はコンクリート。
「大丈夫だよ。屋根は危ないけど、支えになってる鉄骨のところを這っていけばいいんだから」
母はなんともないように言いますが、私が乗ったとたん、鉄骨はグラグラと派手に揺れます。よく見てみれば、鉄骨ではなく、硬いアルミ。
そもそも人が乗ることなんて想定外のはず……。
「だいじょうぶ、だいじょうぶ!」
説得力のない母の声を背中に受けて、カーポートを這って屋根のはしのほうへ向かいます。
あっ、これはさっき見た腰砕けの飼い猫、ミーにそっくりだ……。
いつのまにか、母の横にきていっしょに見物しているミーもニヤニヤ顔。なによ、そのへっぴり腰は、フフフ……。
バリバリ、メキメキ……カーポートの屋根が悲鳴をあげます。
這いつくばって、前進、また前進。
まだ屋根瓦の端にもたどりつけません。真夏の太陽がじりじりと私を照りつけていました。