寿司屋で老婆が血まみれに!
前回から続きます。寿司屋で「ほたての貝紐」が引っ掛かった前歯から、強引に指で貝紐をひっぱりだし、また食べはじめたツネさん。
そして、しばらくしたとき。目の前で食べていた、あの前回入れ歯を忘れたトヨさんが、真っ青になってツネさんの顔を指さして言ったのです。
「あ、あ、あ、あんた!どうしたの!」
「えっ?!」
周囲の友人たちがツネさんを見ると、口の中が血だらけで唇のまわりも血があふれています。
「キャー、やだツネさん!」
鮮血でネタの色さえ、わかりません。まるで老婆のドラキュラ……。
あわてて化粧鏡を取り出すまわりの人々。ポカンとしているツネさんに鏡で見せます。
「あっ!」
鏡で確認しながら、自分の舌でも口の中を確認するツネさん。ようやく事情が飲み込めました。
貝紐を引っ張ったとき、前歯がポキンと折れたか、根本から抜けたかしてしまったのです。本人の舌の感触では抜けている様子……。
しかも、その前歯が抜けたのを知らずに、寿司ネタといっしょにのみこんでしまったのですからたいへんです。
慌てて、舌で前歯の傷口を抑えて止血するツネさん。
そのへんな顔に、ほかの同行した仲間は笑いをこらえるのが精一杯。
おこるわけにもいかず、ツネさんはへんな顔をして止血するばかり……。
ちなみに、毎年、一行が旅の最後にかわす挨拶は、「来年も、死なずに会いましょう」だそうです。