旅行の忘れ物を届ける息子
前回から続きます。サービスエリアで30分の休憩がとられることがわかったトヨさん。
「今のうちに追いついて、早く!早く入れ歯をもってきてちょうだい!」
必死に高速を車で飛ばす息子。とうとう、出発間際のバスに追いつきました!バスに乗り込んできた息子が母に渡します。
「お母さん、入れ歯!」
「はいよ!」
受け取って、カパッとトヨさんの口に装填される入れ歯。
その瞬間、拍手と歓声が沸きました。息子は赤っ恥をかきながら、車へ逃げるようにもどっていきました。
「まったくあんたは、そそっかしいんだから……」
トヨさんにむかって、友人のツネさんが笑います。次の主人公が自分になるとも知らず……。
ちなみに、この旅の目的地は東北地方でした。次の事件が起きたのは地元のおいしいお寿司屋さん。
さっきトヨさんを笑ったツネさん。お寿司をつまみながら、「おいしいね~」と心から満足していたのです。
すると、前歯になにかが引っ掛かりました。
指で引っ張って確認してみると、「ほたての貝紐」が。苦笑するツネさん。
「あ~、年をとるとすきっ歯になって、よくはさまるよ。やんなっちゃうね、ほんとうにねえ」
彼女は貝紐を強引に指でつまんで、前歯からひっぱりだし、また食べはじめたのです。
ところが……。
※★をつけてくださったみなさん、ありがとうございます。このお話は次回、完結です。