屋根瓦をのぼるとき
前回の続きです。バリバリ、メキメキ……。カーポートの屋根を這いつくばって、ふたたび前進した私。
やっとカーポートから屋根瓦の端にたどりつきました。でも……。屋根瓦がツルツルなんです。しかも、斜面でいい角度。
そりゃそうですよね、雨が勢い良く流れなくちゃならないんだし。私、スニーカーです。だいじょうぶなんでしょうか。
すぐ下に隣の家の敷地がありました。隣のおじさんが見栄をはって買った黒いBMW。もう古いし、猫の爪にかじられたりしています。
瓦屋根の斜面を転落してあの上に落ちたら……。
コンクリートよりは怪我が少ないかもしれないけど、斜めに落ちたり、変な角度に落ちたりしたら、車の角とかに頭をぶつけて、もっと大怪我になるかも……。
悪いイメージばかりが浮かんでしまいます。いや、ここは勇気、勇気!
ゆっくり立ち上がって、足場となる瓦に足をかけてみると。
瓦は老朽化してグラグラ……。ああ……。この急角度をてっぺんまで登っていけるのでしょうか。
ゆっくり、ゆっくり登ります。音を立てるな。すると!
「あらあら、危ないわよ、気をつけて!」
突然、へんな方向から声がかかり、足がツルッ。あっ!
伏せて瓦にへばりつく私。危ない、危ない。なんだ、隣のおばさんじゃないか……。